ラジオ DJ の誕生 — 1920 年代アメリカと「DJ」 という言葉の始まり

1935 年、 アメリカのラジオ司会者 Martin Block が「Make Believe Ballroom」 で始めた、 レコードを次々にかけながら語る番組。 「Disc Jockey (ディスク ジョッキー)」 という言葉の起源と、 ラジオが音楽消費を変えた 1920-1940 年代の物語。

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「Disc Jockey」 という言葉の起源

DJ (Disc Jockey) — ディスク (レコード盤) をジョッキー (騎手のように操る人)。 この言葉が英語圏で使われ始めたのは 1935 年、 アメリカの新聞記者 Walter Winchell がラジオ番組の司会者を指してこの造語を使ったのが最初とされる。

つまり DJ という職業の起源は「ラジオの司会者」 であり、 現代のクラブ DJ・ヒップホップ DJ の姿とはまったく違う。 レコードを 2 台のターンテーブルで繋ぐ・スクラッチをする、 という技術的な意味での DJ は、 1970 年代のブロンクスまで待たなければならない。

1920 年代 — ラジオ放送の急拡大

DJ の前提となる商業ラジオ放送 は、 1920 年に米ピッツバーグの KDKA が世界初の商業ラジオ局として認可を受けたことに始まる。 1920 年代を通じてアメリカ・ヨーロッパでラジオ局が爆発的に増え、 家庭にラジオ受信機が普及する。

初期のラジオ放送は 「生演奏中心」。 スタジオにオーケストラ・ジャズバンドを呼び、 その演奏を電波に乗せていた。 レコードをかけて放送するのは 著作権・音質・番組フォーマット上の問題 があり、 主流ではなかった。

Martin Block と「Make Believe Ballroom」 (1935)

1935 年、 ニューヨークの WNEW ラジオで Martin Block が始めた番組 「Make Believe Ballroom」 が、 現代につながる DJ 番組の原型を作った。

Block の発明:

  • 架空の舞踏場から生中継しているような演出 — 実際にはスタジオでレコードをかけているだけ
  • 1 人の司会者が、 番組全体をパーソナリティで貫く
  • リスナーの手紙で選曲リクエストを取り込む

これがヒットし、 全米の他局がフォーマットを真似る。 「音楽をかけながら、 司会者が主役」 という形式は、 その後 60 年以上ラジオ放送の主流モデルになる。

Alan Freed — ロックンロールを命名した DJ

1950 年代のアメリカで、 R&B・ロックンロールをラジオで広めた立役者が Alan Freed (1921-1965)。 クリーブランドの WJW ラジオでの番組 「Moondog Show」 (1951 年〜) で、 黒人音楽を白人ティーンエイジャーに大量に紹介した。

  • 「Rock and Roll」 という言葉を大衆化 — 元々は黒人スラング、 Freed が番組でこの言葉を連呼して定着させた
  • 人種の壁を超える音楽番組 — 当時のアメリカで、 白人 DJ が黒人音楽を熱心にプッシュするのは大きな社会現象
  • 1954 年、 ニューヨーク WINS に移籍。 全米に影響力を持つ DJ に

Freed は 1959 年の ペイオラ (payola) スキャンダル (レコード会社から金銭を受け取って選曲していた告発) で失脚するが、 「DJ が音楽シーンを動かす存在」 になれることを証明した。

DJ = 「音楽の目利き × パーソナリティ × 選曲者」

1920-1950 年代の DJ 像は、 現代のクラブ DJ とはかなり違う一方で、 現代の キュレーター的 DJ・ラジオショウ的 DJ (BBC Radio 1 の Pete Tong など) に直接繋がっている。

このころの DJ の役割:

要素 内容
音楽の目利き 新譜・埋もれた曲を掘り出す
パーソナリティ 声・語り・キャラクターで番組を貫く
選曲者 1 時間の流れを設計する
リクエスト対応 リスナーの声を反映する

このうちの「パーソナリティ」 と「選曲」 の 2 つは、 現代のクラブ DJ にも継承されている。 音楽の目利きは今も DJ の核であり、 リクエストは Boiler Room ・ Twitch の live chat に姿を変えて残っている。

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DJ という言葉と概念は、 1930 年代のアメリカラジオで生まれた。 だが、 2 台のレコードを繋ぐ音楽で踊らせるクラブという空間、 これらの要素はまだ揃っていない。 次の記事では、 1970 年代ニューヨーク、 David Mancuso の The Loft と Nicky Siano の The Gallery が始めた ディスコ黎明期の DJ 文化 に入る。

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