現代のヴァイオリニスト — パールマン・ムター・ヒラリー・ハーン

20 世紀後半から 21 世紀に活躍する名手たち。 温かい人間味のイツァーク・パールマン、 カラヤンに見出された現代の女王アンネ=ゾフィー・ムター、 バッハと現代音楽を等しく極める知性派ヒラリー・ハーン、 マルチな活動のジョシュア・ベル。 コンクール文化、 銘器の貸与、 クロスオーバー — 現代ヴァイオリン界の姿を辿る。

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巨匠世代から 現代へ

ハイフェッツら 20 世紀前半の 巨匠世代の後、 20 世紀後半から 21 世紀に かけて、 新しい世代の 名手が 登場した。 録音・映像・配信の 時代に、 彼らは 演奏家の あり方を 更に 多様化させた。

パールマン — 温かい人間味

イツァーク・パールマン (Itzhak Perlman、 1945-) は イスラエル生まれ、 アメリカで 活躍する 現代を代表する ヴァイオリニスト:

  • 4 歳で ポリオに罹患、 以後 車椅子や 松葉杖で 演奏 — 障害を越えた 音楽活動の象徴
  • 温かく 豊かな 音色、 親しみやすい 人間味
  • 映画 [シンドラーのリスト] のテーマ を演奏 (ジョン・ウィリアムズ作曲) — 世界中に知られる
  • 使用楽器は ストラディヴァリ 「ソイル」 (1714) — かつて メニューインの楽器
  • テレビ出演・教育活動でも 親しまれ、 クラシックの 敷居を下げた

ムター — 現代の 女王

アンネ=ゾフィー・ムター (Anne-Sophie Mutter、 1963-) は ドイツ生まれ。 現代の 女王と称される:

  • 13 歳で カラヤンに見出され、 ベルリン・フィルと共演してデビュー
  • 古典から 現代まで 幅広く、 現代作曲家に 積極的に 新作を委嘱 (ペンデレツキ、 プレヴィン他)
  • 力強く 官能的な 表現、 ステージ映えする 存在感
  • 使用楽器は ストラディヴァリ 「ローデ」 等
  • 若手支援の 財団活動も

ムターは 「伝統の継承者」 であると同時に、 現代音楽の 擁護者として 独自の地位を築いた。

ヒラリー・ハーン — 知性と 純度

ヒラリー・ハーン (Hilary Hahn、 1979-) は アメリカ生まれ、 現代の 最高峰の一人:

  • 知的で 正確、 透明感のある 音 — 「純度」 の高い演奏
  • バッハの無伴奏 を キャリアの核に据え、 デビュー盤から 一貫して探求
  • 現代音楽にも 積極的 — 27 人の作曲家に アンコール小品を委嘱する プロジェクト
  • SNS・YouTube で 練習過程を 公開 (#100daysofpractice) — ファンとの 新しい関係
  • グァルネリ・デル・ジェスの コピー (ヴィヨーム製) を 長年愛用

ハーンは バッハ (伝統) と 現代音楽・SNS (革新) を 等しく極める、 21 世紀型の 名手。 次記事の 「配信時代」 の 先駆でもある。

ジョシュア・ベル — マルチな活動

ジョシュア・ベル (Joshua Bell、 1967-) は アメリカの 人気ヴァイオリニスト:

  • 端正な 容姿と 華やかな 演奏で 人気
  • ストラディヴァリ 「ギブソン」 (1713) — かつて 盗難に遭った 数奇な来歴の楽器
  • 2007 年、 ワシントンの地下鉄駅で 変装して演奏する 社会実験 — 通行人の ほとんどが 名手と気づかず 素通りした話が 話題に (文脈が芸術体験を いかに規定するか)
  • 映画音楽 (「レッド・バイオリン」) や クロスオーバーにも

コンクール文化

現代の ヴァイオリニストの 登竜門は 国際コンクール:

  • チャイコフスキー国際 (モスクワ)、 エリザベート王妃国際 (ブリュッセル)、 パガニーニ国際 (ジェノヴァ)、 ヴィエニャフスキ国際 (ポーランド) など
  • 優勝が 世界デビューの切符、 銘器貸与や 録音契約に繋がる
  • 日本人奏者の 上位入賞も 増加 (次記事)

コンクールは 「若手発掘の 装置」 として、 現代の 演奏家キャリアの 中核をなす。

銘器の 貸与を巡って

第 2 記事で見た 銘器の貸与文化は、 現代の 名手を支える インフラ:

  • 財団・銀行・個人コレクター が ストラド・デル・ジェスを保有し、 有望な奏者へ貸与
  • 若手は デビュー時に 貸与を受け、 名声とともに より良い楽器へ
  • 「楽器が 演奏家を 育てる」 側面

現代の 名手の 「音」 は、 300 年前の 銘器と 現代の 技術・音楽性の 時代を超えた 共作である。

クロスオーバーと 拡張

現代ヴァイオリンは クラシックの 枠を超えて 広がる:

  • ジャズ・ヴァイオリン — ステファン・グラッペリの系譜
  • エレクトリック・ヴァイオリン — ロック・ポップスとの融合
  • 映画音楽・ゲーム音楽 — 弦の 感情表現が 重宝される
  • クロスオーバー・アーティスト — André Rieu、 Vanessa-Mae 等、 大衆的人気

「人声に最も近い楽器」 という ヴァイオリンの 本質が、 ジャンルを超えて 求められている。

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現代の 世界的ヴァイオリニストを辿った。 最終記事では 日本の ヴァイオリニストと 配信時代 — 諏訪内晶子・五嶋みどり/龍・樫本大進 ら 世界の第一線に立つ 日本の名手、 スズキメソッドの 教育文化、 そして SNS・YouTube・配信が 生む 新世代の ヴァイオリニストに迫り、 このシリーズを 締めくくる。

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